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片岡義男.com 全著作電子化計画

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評論・エッセイ

散歩して迷子になる 2 読むに至るまでの助走路を歩く

 まぎれもなくアメリカのものであることを越えて、アメリカそのものであると言っていいペイパーバックが、東京の世田谷区のあちこちにある古書店で買えるということは、子供の僕にはたいそう面白いことだった。古書店へふといってみると、何冊かのペイパーバックがほぼかならずあるのだ。あるからみんな買う、ということが面白くて、買うことを何度も僕は繰り返した。一冊が十円か二十円だった。当時のものが何冊も僕のペイパーバックの山のなかにある。裏表紙の右肩に店主が鉛筆で書きつけた、10、20といった数字をいまも見ることが出来る。当時の中学一年生の小遣いとしては…

『図書』二〇〇八年五月号

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