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評論・エッセイ

片岡義男のアメリカノロジー 「ブルックリンはアメリカン・ドリームの発生の地だよ」とイタリー系青年は笑った。

 ヨーロッパで休暇をすごして帰って来たニューヨーカーたちのあいだで昔から言われていたひとつの軽い冗談のような言いかたに、次のようなものがある。
「休暇をとって、ヨーロッパで5週間、すごしてきたのですよ。このくらいのヨーロッパ体験なら、なにもわざわざヨーロッパへいかなくても、橋を渡って河むこうへいけば、こと足りるのですけどね」
 ほんとうに定石的な、昔からある言いかたなので、どんなにうまく言ってももはや冗談にはならないけれども、内容的には、すこし大げさに言うなら、このとおりなのだ。
 橋とは、この場合…

『POPEYE』一九八四年三月二十五日号

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