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評論・エッセイ

片岡義男のアメリカノロジー ぼくにブリキのピストルの面白さを教えてくれたのは、ひとりの海兵隊員だった。

 ボビー・ジョンスンは、自分の掌の上に乗せたブリキのオモチャのピストルを、しげしげと見ていた。
 大きな、ごっつい掌だった。手の甲には、いちめんに、毛が生えていた。サンアントニオ出身のボビーは、海兵隊の航空機整備兵だった。
 自分はいつもガソリンやオイルの中に手をつっこんでいるので、手の甲にはガソリンがしみこんでいて引火性になっている、とボビーはいつも言っていた。
 マッチの火を、手の甲の毛に数センチまで近づけると、ほんとに毛はパッと燃えはじめ、手の甲いちめん小さな山火事のように燃えさかるのだった。…

『POPEYE』一九七八年六月十日号

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