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評論・エッセイ

片岡義男のアメリカノロジー ラハイナ・ボーイたちは砂糖キビ畑から吹いてくる甘い風で目を覚ます。

 風の香りに目が覚める。まだ雲のない朝の山から砂糖キビ畑の上を吹き渡ってくる風だ。甘い風。量感がある。それに、朝とはいえすでに充分に暑くなった陽ざしの芳しい香りをいっぱいにはらんでいる。今日も快晴、マウイ日和の暑い日だよ、早く起きろ、と風が言っている。
 洗面所の窓から、となりの家のスペインふうの庭ごしに、砂糖キビ畑が見える。鮮明な陽ざしのなかに、いちめんの緑だ。砂糖キビのあの丈夫な葉の風に触れあう音が、風に乗って金網ごしに吹きこんでくる。おはよう、シュガーケイン。しかし、それにしても、この歯みがきはチューインガムをドロド…

『POPEYE』一九七八年七月十日号

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