商店街を駅に向かって、片岡義男さんと僕は並んで歩いていた。すると、僕にとってはおなじみの匂いが流れてきた。ふと匂いのする方向に目を向けるとファスト・フードの店が見えた。ファスト・フードというとハンバーガーを思い出すかたもいるだろうが、そうではない。具体的に書くのは憚られるので、どんな店なのかはご想像にお任せしたい。入店から食べ終わるまで十分もかからない、そのような飲食店だ。僕はしばしばそんな店にふらりと入り、あっという間にかきこんで満足感を得ている。したがって「おなじみの匂い」なのだ。この匂いを嗅ぐと食欲が猛烈に湧いてくる、といえば…