サウンドスケープを歩く 3
ジャズやジャズ・ヴォーカルのCDには紙ジャケットに入ったものが多いようだ。一九五〇年代、六〇年代アメリカの、幻の名盤や傑作LPが世界で初めてCDになるとき、それらはしばしば紙のジャケットに入る。CD店の棚を見て歩き、いったい誰が買うのだろうか、などと思いながらその自分が、片手にひとつかみ、買って帰った。
まずケイ・スターの歌声を聴くことにした僕は、彼女のCDの最初の曲『サイド・バイ・サイド』を受けとめた瞬間、心の底から驚いた。ちょうど五十年ほど昔の、完全に忘れていた出来事のすべてを、ディテールとニュアンスも豊かに、いっ…
『Coyote』No.18 二〇〇七年六月号
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