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小説

廃墟の明くる日 いまは無職、二十八歳、美人で聡明 2

 森下とは、月刊の読み物雑誌の編集長をしている中年の男性で、彼が美代子の店へ初めていったときには、この森下といっしょだった。飲み仲間と美代子の店で落ち合うという森下が、きみも来いよ、と若い彼を誘った。
「彼なら小説を書けるだろう、と森下さんはおっしゃってたわ」
 ひとり用の肘かけ椅子にすわっている下着姿の美代子は、腰を前にずらして両脚をのばした。
「男と女の小説になるのなら、それはたとえばあなたと私かしら」
「それもあり得ますね」
 としか彼には言いようがなかった。

『Coyote』No.10 二〇〇六年三月号

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