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小説

廃墟の明くる日 いまは無職、二十八歳、美人で聡明 1

 黒いすわりテーブルを前にして彼は座布団にすわっていた。そのかたわらに彼女が、畳の上に横ずわりしていた。ストッキングにつつまれた脚を微妙にずらせて重ね合わせ、スカートの裾から長くのばしていた。係の女性がふたりのお茶と饅頭をテーブルに置き、盆を持ってうしろへ下がりつつなかば腰を上げ、「ドアには内側から鍵をおかけになってください」と言った。そしてドアへと歩き、部屋を出ていった。滑らかな身のこなしで彼女が立ち上がり、ドアをロックした。
 壁のスイッチに彼女は手をのばした。スイッチは縦に三つならんでいた。いちばん下のスイッチを彼女…

『Coyote』No.9 二〇〇六年一月号

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