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小説

廃墟の明くる日 一九六四年の美人に助けられて 1

 一九六四年初夏のある日、神保町の喫茶店で僕は原稿を書き上げた。千六百字の連載原稿に、書き上げた、という言いかたがふさわしいかどうか。夕方の五時半をまわっていた。連載している週刊誌の編集部に、六時までには届ける約束だった。お茶の水にある編集部まで早足で歩いて九分。間に合う。そんなことを思いながら、僕はコーヒーの代金を支払い、喫茶店を出た。
 駅から少しだけ離れた交通量の多い交差点に面した建物の三階に、その週刊誌の会社はあった。漫画の週刊誌をいくつか刊行していた。僕はそのなかのひとつに、「今週の恰好いい!」という連載記事を書…

『Coyote』No.7 二〇〇五年九月号

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