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小説

彼と彼女の信頼関係 午後三時のハイヒール 私の下着姿を写真に撮ってください。

 午後一時過ぎに彼女から彼のところに電話があった。お会いしたいです、コーヒーでも飲みましょう、と彼女は言った。午後三時に会ってコーヒーを飲むことにした。あそこはどうかしら、と彼女は提案した。彼女のオフィスがある建物から道路をへだてたむかい側に、おなじような巨大な建物があった。その建物の一階の奥に、カウンターだけのコーヒーの店があった。彼女が言うあそことは、その店のことだった。
 午後三時ちょうどにその建物に到着するように、彼はオフィスを出た。ふと思いつき、カメラを持った。そして待ち合わせの場所まで、彼は陽ざしのなかを歩いた…

『週刊宝石』一九九二年四月二十三日

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