VOYAGER

片岡義男.com 全著作電子化計画

MENU

小説

彼と彼女の信頼関係 午後三時のハイヒール 見せたい、という気持ちは強くあります。

 ふたりはホテルの部屋に入った。背後でドアが自動的に閉じた。左はクロゼット、そして右側には浴室のドアがあった。そのあいだを彼女が先に立って歩いた。左側に荷物を置く台が壁に寄せて低くあり、その部分の壁には姿見が取り付けてあった。台と一体になって、ドレッサーが壁に沿って部屋の奥にむけてのびていた。
 ドレッサーとむきあって、ダブル・ベッドがひとつあった。端正にメイクされたベッドは、もの静かに無言だった。ベッドとドレッサーとのあいだをとおり抜けたむこうに、ソファとその前の低いテーブル、そして壁ぎわにライティング・デスクがあった。…

『週刊宝石』一九九二年四月二日

このエントリーをはてなブックマークに追加