読む、映画『ストラッター』 この世ならざるもうひとつの現実
終わってクレディットがロール・アップしていく画面の所要時間にぴったり合わせて、それまでのストーリーとは独立した、しかしぜんたいを見事にひと言で要約しているようなシークェンスがある。これが素晴らしい。ここを見逃してはいけない。ここにすべてがある。
中古楽器店の店員として働いている主人公のところへ、男の客がひとりあらわれる。壁に吊るしてある何本もの電気ギターを品定めする。弾けないからなあ、などと言いながら手にした一本を、男は弾いてみせる。どんなに美しく出来上がっているギターでも、弾かれないかぎりそれは現実のなかにあるただの…
『キネマ旬報』二〇一三年十月下旬号