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評論・エッセイ

読む、映画『黒いスーツを着た男』 死のどうにもならなさ

 興味深く最後まで観た。主題は死だ。死はさまざまなかたちと内容で主題になり得る。この映画の場合は、死がかならず持つ、どうにもならなさ、という側面だ。
 モルドヴァからパリへ移住して不法就労していたまだ若い男性が、深夜に不注意な運転をしていたベンツにはねられる。運転していた男、アルは、同乗していた仲間たちにそそのかされ、道路に横たわる男をそのままにして逃走する。
 このモルドヴァからの男に関する、その後の展開が丁寧に描かれている。目撃した若い女性、ジュリエットの関与、救急隊員による搬送、病院での医師の説明、男がい…

『キネマ旬報』二〇一三年九月下旬号

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