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片岡義男.com 全著作電子化計画

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評論・エッセイ

読む、映画『ハード・ラッシュ』 「なんとかする」と彼は言った。

 いまは警報装置の設置販売という堅気の仕事で日々を送る主人公、という適役をマーク・ウォールバーグが演じている。設置現場で仕事をする彼の描写が一度だけある。ブルーカラーとしての身のこなしの良さは、演技であるよりも地だろう。
 彼には家庭があり、そこには美しい奥さんとふたりの子供がいる。場所はニューオリンズだ。その奥さんの弟がコカインの密輸に失敗する。売値七十万ドルの返済を二週間の期限で求められ、泣くほかない。返済がなければお前だけではなく姉やその夫そして子供たちも殺す、と脅される。単なる脅しではない。どこまでも本気なのだ。<…

『キネマ旬報』二〇一三年七月下旬号

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