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評論・エッセイ

読む、映画『ブラインドマン その調律は暗殺の調べ』 この映画のいちばんいいところ フランスのノワール映画を観るたびに思うこと

 戦争の最前線の白兵戦で体を張る兵士とは、なになのか。命を落とせば戦死した兵士として墓に入る。いくつもの激戦を生きのびれば、現役を退くまでは優秀な兵士だ。眼前の敵兵はそのつど倒した。だから自分はいまも生きている。ごくおおまかに言って、彼によって倒された敵兵は、彼の側の正義の犠牲者だ。
 その彼はアフガニスタンでの戦闘で負傷して完全に失明した。しかし戦闘能力は兵士のときのままだ。そして正義の観念も。暗闇のなかでその正義は殺し屋に転身した彼を支える。たとえば、フランス軍の武器が外国へ密輸され、テロリストの手に渡り、フランス製の…

『キネマ旬報』二〇一三年四月下旬号

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