VOYAGER

片岡義男.com 全著作電子化計画

MENU

評論・エッセイ

読む、映画『そして友よ、静かに死ね』 字幕に残されるべき言葉の構造の、輪郭

 銀行や郵便局、税務署などから現金を強奪することを一生の仕事にする人たちが、社会的な階層として存在する、あるいは、かつては存在した、という事実を前提として承知していると、落ちついた気持ちでこの映画をより良く楽しむことが出来る。いまも存命の実在の人物の自叙伝に多少のフィクションを加えたのがこの映画の物語だ。
 現金の強奪はひとりでは出来ない。仲間が必要だ。それぞれに場数を踏んだ筋金入りの猛者を仲間に持ち、彼らとの緊密な関係のなかに、仕事も私生活も成立させなくてはいけない。仲間とは信頼関係のことだ。この信頼関係を根底から覆すの…

『キネマ旬報』二〇一二年九月下旬号

このエントリーをはてなブックマークに追加