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評論・エッセイ

かつてはよく使っていたはずなのに

 子供の頃に覚えていまも知ってはいるけれど、自分では一度も使ったことのない言葉。いつの間にか聞かなくなった言葉。いま自分で使うのは恥ずかしい言葉。その言葉を聞いただけでかつては気持ちが高揚した言葉。このような言葉を夕食の席で同席した人たちに求めたら、どの人も面白がり、たくさん集まった。覚えきれないのでメモしたなかから、それぞれに説明を加えて、いくつか紹介しようと思う。
「とばっちり」
 ちゃんと漢字がある。迸り、と書く。小学校一年生くらいの頃に知った。当時は人との関係が密接だった。身のまわりにいつも何人かの人が…

初出:『サンデー毎日』二〇二〇年十一月一日号(「コトバのおかしみ・コトバのかなしみ」71「かつてはよく使っていたはずなのに」)
底本:『言葉の人生』左右社 二〇二一年

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