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片岡義男.com 全著作電子化計画

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評論・エッセイ

一拍子、二拍子、四拍子

 僕の自宅にある固定電話の十桁の番号のなかに、2という数字が四つある。この番号になってから三十年以上が経過している。
 自分のこの番号を電話で人に伝えるとき、僕は2を「ニ」と発音している。最初からだ。しかし復唱する相手は、いかなる場合であろうとかならず、2を「ニイ」と言う。このことに僕が気づいてから十年近くたっている。
 電話番号を音声にするにあたっては守るべきルールがある。1「イチ」、2「ニイ」、3「サン」、4「ヨン」5「ゴオ」、6「ロク」、7「ナナ」、8「ハチ」、9「キュウ」、0「ゼロ」というルールだ。2と…

初出:『サンデー毎日』二〇二〇年十月二十五日号(「コトバのおかしみ・コトバのかなしみ」70「コトバのリズムが読み方を規定する」)
底本:『言葉の人生』左右社 二〇二一年

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