ライナスは眼鏡をかけている
こんなふうに描かれたライナスを僕は初めて見た。僕がいま使っている卓上の日めくりカレンダーの、九月一日の均等に四つに割られたコマの、最後のコマのなかに、このライナスはいる。チャーリー・ブラウンの胸から顔にかけての高さのところで、ライナスは地面と平行に、空中に浮かんでいる。あまりのうれしさにライナスは空中に浮かんでしまったのだ。
「ミス・オーマーが学校に戻って来たんだ」とうれしそうに叫んでいる空中のライナスのぜんたいは、ごく初歩的な平泳ぎを試みている人のように見える。これはいったい何なのか、という表情で、チャーリー・ブラウン…
初出:『サンデー毎日』二〇二〇年十月四日号(「コトバのおかしみ・コトバのかなしみ」67「成熟している小さな哲学者」)
底本:『言葉の人生』左右社 二〇二一年
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