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評論・エッセイ

人が生きるから人生なんだよ

 その言葉を目にしただけで、あるいは聞いただけで、そのとたん、すべてがわかった気持ちになる言葉、というものがある。一生そして人生のふたつは、その代表ではないか。どちらの言葉も、あらゆる人たちが、じつにさまざまな状況のなかで、おそろしいまでに気楽に使う。おそらくそのせいでもあるだろう、一生や人生について、自分はすでにすべてを知っている、という気持ちになる。
 一生、と書いて、イッショウ、と読む。イッセイやカズオは男性の名前としてはあり得る。ヒトナマ、イチナマ、イチオなどとは、かつての僕ですら読まなかった。しかしいまならごく普…

初出:『サンデー毎日』二〇二〇年九月二十七日号(「コトバのおかしみ・コトバのかなしみ」66「具体的であり一般的でもある」)
底本:『言葉の人生』左右社 二〇二一年

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