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評論・エッセイ

花道はもはやどこにもない

「俺」という言葉のつく慣用句について、かつて僕は書いた。今回は「男」だ。
「この世に男と生まれて」という言いかたはまだ現役だろうか。男に生まれるか女に生まれるかは、まったくの偶然だ。女に生まれようが男に生まれようが、変わりはいっさいない。しかしこのことを、男の子供が成長していく過程で大きく変えてしまうのは、日本の男尊女卑のいっぽうになった、日本の母親たちだ。
「あなたは男なんだから」そんなことはしなくていい、と母は言う。「あなたは男なんだから」そんなことは知らなくてもいい、とも彼女は言う。なんにも知らない、なん…

初出:『サンデー毎日』二〇二〇年九月六日増大号(「コトバのおかしみ・コトバのかなしみ」63「花道なんかどこにもない時代に」)
底本:『言葉の人生』左右社 二〇二一年

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