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評論・エッセイ

歌のなかの女性たち

 歌われている女性主人公の名前が、題名あるいは歌詞に出てくる歌謡曲の、いちばん初めのものは、『カチューシャの唄』だろう。一九一四年に中山晋平が作曲し、女優の松井須磨子が舞台で演じていた芝居の劇中歌として、無伴奏で歌った。
 これが口コミで評判となり、新聞が記事にし、歌詞や譜面を紹介し、ついにはレコードが、そして譜面が市販された。日本の歌謡曲はここから始まった、と言われている。
『カチューシャ』という歌もある。こちらはロシア民謡に日本語の歌詞をつけたもので、歌声喫茶の客たちがかつて盛んに歌った。
 カ…

初出:『サンデー毎日』二〇二〇年七月五日号(「コトバのおかしみ・コトバのかなしみ」55「歌われた女性たちの名前の美しさ」)
底本:『言葉の人生』左右社 二〇二一年

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