よろしかったでしょうか
ごく最近の出来事だ。僕に友人ふたりを加えて三人がカフェに入り、コーヒーを注文した。そのときウエイトレスが言ったひと言が、僕にはとっさには理解出来なかった。
どんな状況だったのか、正確に書いておこう。僕たち三人はおなじ種類のコーヒーを注文した。「お砂糖とミルクはお使いになりますか」とウエイトレスに訊かれて、三人とも、どちらも使いません、と答えた。お待ちください、というひと言を残して、ウエイトレスはにこやかに去った。やがて三人のコーヒーがテーブルに届いた。三人のコーヒーをテーブルに置きながら、「お砂糖とミルクはよろしかった…
初出:『サンデー毎日』二〇二〇年五月二十四日号(「コトバのおかしみ・コトバのかなしみ」49「相互理解の上に成り立つ省略」)
底本:『言葉の人生』左右社 二〇二一年
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