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評論・エッセイ

日本語は滅びていくのだろうか

「だいじょうぶです」というひと言を、じつに多くの人が使っている。便利なのだろう。口をついてこの言葉が出てくる、という状態になっている。多くの人がいろんな状況のなかで使っているうちに、使用範囲が広がっていく。使用範囲が広がれば、意味も違ってくるのは当然だ。
 間に合っている。そんな必要はない。ご心配は無用です。という意味で、「だいじょうぶです」というひと言が使用されている。ある男性が女性を夕食に誘った。たまにはおいしいものを食べようよ、という彼の言葉に対して返ってきたのは、「だいじょうぶです」だった。
 誘った男…

初出:『サンデー毎日』二〇二〇年四月十二日増大号(「コトバのおかしみ・コトバのかなしみ」44「滅びていく日本語の中で残るもの」)
底本:『言葉の人生』左右社 二〇二一年

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