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片岡義男.com 全著作電子化計画

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評論・エッセイ

戦争の経済的負担はとてつもない額になる

 一九六〇年代なかばのある日、disposableという言葉とwatchという言葉が、僕の目の前で結びついた。証拠物件のように、その現物が僕の手のなかにあった。
 アメリカ軍は兵士たちに配付する腕時計として、電池式で本体はプラスティックの、軽量な腕時計を採用した。電池がなくなったら、電池を交換するのではなく、それはそのまま捨ててしまい、新品を使うのだ。だからこその、disposable watchだった。
 電池を交換するなら、その電池を大量に作らなくてはいけない。人材を養成し、道具を揃え、新たな部署をいくつも…

初出:『サンデー毎日』二〇二〇年四月五日増大号(「コトバのおかしみ・コトバのかなしみ」43「新しい言葉が生まれる国で」)
底本:『言葉の人生』左右社 二〇二一年

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