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評論・エッセイ

きまり文句ですべてが間に合う

 この本の『僕はきまり文句を使わない人なのか』できまり文句のことを僕は書いた。子供の頃に覚えた数々のきまり文句だが、大人になってからは一度も使っていない。しかし自分の日本語能力の陰の部分で基礎になっているのではないか、という趣旨だった。今回もきまり文句についてだ。
 小説やエッセイなどの創作も含めて、自分がいつも使っている日本語の特徴のひとつは、きまり文句を使わないことだ。きまり文句とは、たとえば、次のような言葉だ。
「お恥ずかしい話ですが」
「いたずらに馬齢を重ねています」
「それはそ…

初出:『サンデー毎日』二〇二〇年二月二十三日号(「コトバのおかしみ・コトバのかなしみ」37「きまり文句で維持されている国」)
底本:『言葉の人生』左右社 二〇二一年

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