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片岡義男.com 全著作電子化計画

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評論・エッセイ

手間は出来るだけ省きましょう

 業界ではその名を広く知られた企業の部長である彼のところに、人から貰った名刺がたまっていく。だから整理する。整理とは言っても、二百四十枚の名刺を差し込む、ビニール製のごく簡単なホルダーに、時間順に入れておくだけだ。
 こうして名刺を整理しながら、この数年で気づいたことがひとつある。それは、営業、という言葉が消えていきつつある、ということだ。営業、という漢字が消え、片仮名語になる。
 営業を商売ととらえると、該当する言葉はビジネスだから、ビジネス・プロデュース局とかビジネス・デザイン部といった片仮名が名刺に印刷さ…

初出:『サンデー毎日』二〇二〇年二月九日増大号(「コトバのおかしみ・コトバのかなしみ」35「日本語にする手間を省いた結果」)
底本:『言葉の人生』左右社 二〇二一年

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