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評論・エッセイ

豚肉の生姜焼きとポーク・ジンジャー

 街を歩いていたら洋食の店があった。料理サンプルのならんだウィンドーに歩み寄って僕は観察した。豚の生姜焼きがあった。豚のロース肉をソテーして生姜の味をつけたものだ。肉屋では生姜焼き用の豚肉を販売している。それほどに人気のある料理だ。
 おなじ街をしばらく歩くと、ふたたび洋食の店があった。ここでも僕はウィンドーのなかの料理サンプルを観察した。さきほどの店の、豚の生姜焼きとほとんど変わらないものが、この店ではポーク・ジンジャーだった。
 キャベツの千切りにパセリ、そしてミニ・トマト。生姜の味や香りをつけてソテーした…

初出:『サンデー毎日』二〇二〇年一月五・十二日合併号(「コトバのおかしみ・コトバのかなしみ」31「いつのまにか使われている言葉」)
底本:『言葉の人生』左右社 二〇二一年

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