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評論・エッセイ

わずか三画のなかに日本のすべてがある

 上という字には「ウエ」と「ジョウ」のふたとおりの読みかたがある。上と一対になって下がある。「シタ」あるいは「ゲ」と読む。上下は「ジョウゲ」と「ウエシタ」だ。「ウエシタ」の場合は、上と下が単に逆になっている場合の表現に使う。「それじゃ上下が逆じゃないか」というふうに。この場合、「ジョウゲ」とは言わない。
 上という三画の字の三画目の横棒のまんなかに、下に向けて垂直に線を引く。内角九十度がふたつ出来る。右側の九十度のまんなかに、点よりは長く線より短く、ちょんと書けば、下という字になる。
 日本人に一生ついてまわる…

初出:『サンデー毎日』二〇一九年十二月二十二日号(「コトバのおかしみ・コトバのかなしみ」29「わずか三画に日本のすべてがある」)
底本:『言葉の人生』左右社 二〇二一年

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