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片岡義男.com 全著作電子化計画

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評論・エッセイ

男性の存在が前提にされている

 二〇一九年から単純に引き算をして六十二年前、高校三年の一月なかば、卒業式まであとふた月ない頃、高校生活は終わったも同然の日々だった。
「三年生の女子生徒諸君は全員、家庭科の教室に集合すること」と、アナウンスがあった。化粧品会社が高校へ出張し、女性たちに化粧を手ほどきし、実際に彼女たちに化粧をほどこした。
 終わって女性たちは教室へ戻ってきた。すぐに洗い落とした人、化粧したまま恥ずかしそうにしている人、誇らしげな人、自分の大きな変化に驚いている人など、さまざまだった。化粧の効果は確実にあった。
 彼…

初出:『サンデー毎日』二〇一九年十一月二十四日号(「コトバのおかしみ・コトバのかなしみ」25「男たちの存在を前提に表される女」)
底本:『言葉の人生』左右社 二〇二一年

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