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評論・エッセイ

六十八年ぶりの日本と日本語

 ナオミ・ヒラハラという名前には見覚えがあった。カリフォルニアに住んでいる日系の作家だ。『ヒロシマ・ボーイ』という題名には惹かれるものが強くあった。だから僕は彼女の二〇一八年のこの作品をペイパーバックで手に入れ、読んでみた。
 マス・アライというカリフォルニアに住む日系のガーデナー(庭師)を主人公にしたミステリー・シリーズの七作目であり、マス・アライのシリーズはこれが最後だということを、ペイパーバックを手に入れてから僕は知った。マス・アライは二〇一八年で八十六歳だという。マスはマサオをアメリカ的に短縮したものだ。マサオより…

初出:『サンデー毎日』二〇一九年十月十三日号(「コトバのおかしみ・コトバのかなしみ」19「五十年ぶりの日本と日本語」)
底本:『言葉の人生』左右社 二〇二一年

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