VOYAGER

片岡義男.com 全著作電子化計画

MENU

評論・エッセイ

国際都市で天麩羅定食を食べる

 成田空港は一九七八年五月に開港した。成田はこれから国際都市になるのだ、とメディアは盛んに報じた。二年後の一九八〇年、五月の曇った日、国際都市をひと目見ようと、東京駅から電車に乗って僕は成田へ向かった。
 成田を僕は、知らないわけではない、という程度には知っていた。参道の町だ。豆まきで広く知られた寺がある。久しぶりの成田は僕が知っていた成田とまったくおなじだった。なんら変わっていない、日本のどこにでもある門前町だ。
 国際都市にはなっていないように思える成田を僕はひとりで歩いた。外国の人がたくさん歩いていて、さ…

初出:『サンデー毎日』二〇一九年十月六日増大号(「コトバのおかしみ・コトバのかなしみ」18「定食・セット・コースを味わう」)
底本:『言葉の人生』左右社 二〇二一年

このエントリーをはてなブックマークに追加