VOYAGER

片岡義男.com 全著作電子化計画

MENU

評論・エッセイ

日本語にとって「三」とはなにか

 三のつく言葉が日本語にはじつに多い。冒頭に三のつく言葉を国語辞典から書き写すだけで、二百は超えるだろう。三位一体。三振。三周忌。三段論法。三人三様。などの言葉だ。どこか途中に三の隠れている言葉もある。仏の顔も三度。盗っ人にも三分の理。二度あることは三度ある。
 日本語にとって三とはなにか。神聖な意味でもあるのかと思ったが、そうでもない。広辞苑には「数の名。みつ。みっつ」とあるだけだし、新明解国語辞典第六版には「二の次の数」とあるだけだ。
 これがここにこうある、という具体的なありかたがひとつだったら、それは一…

初出:『サンデー毎日』二〇一九年九月二十九日号(「コトバのおかしみ・コトバのかなしみ」17「『たくさん』を表す最小の数字」)
底本:『言葉の人生』左右社 二〇二一年

このエントリーをはてなブックマークに追加