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評論・エッセイ

あまりにも素晴らしい出来事

 ワンカップ大関という清酒がいまも市販されている。透明なガラスの容器に入っていて、個別に包装されている。その容器はカップに見えなくもない。だから僕はワンカップという商品名を、ひとつのカップに入った清酒、と理解した。一九六四年に定価八十五円で市販されてからごく最近まで、その理解はゆるがなかった。
 ある出来事をきっかけに、ひょっとしたらこのワンカップは、一杯やりましょう、と日本の人たちが言うときの、あの「一杯」という言葉を、英語に直訳したものなのではないか、と思うようになった。その出来事については、すでに何度か書いた。あまり…

初出:『サンデー毎日』二〇一九年八月四日号(「コトバのおかしみ・コトバのかなしみ」10「構文として何の問題もない英訳」)
底本:『言葉の人生』左右社 二〇二一年

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