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片岡義男.com 全著作電子化計画

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評論・エッセイ

バッテンボーからビル・ライス・テレビの国へ

 いまから六十六年前、この僕は中学生になり、四月の晴れた日の午後、新しい教科書をたくさんもらったか買ったかして、かかえるように持ち、学校から自宅へ向かった。僕は、教科書があってもなくても関係がないくらい教科書と縁のない子供だったが、たまたま英語の教科書を開いてみた。『ジャック・アンド・ベティ』という題名の教科書だった。
 僕はその教科書を見て仰天した。子供の僕に可能だった範囲いっぱいに驚いた。だから仰天という言葉をここで使う。それ以外の言葉はいまだにないのだ。あまりにも驚いたので、その英語の教科書を最初から最後まで、僕は歩…

初出:『サンデー毎日』二〇一八年十一月十八日号(「時代に翻弄されるコトバたち」1「英語を『日本語的なもの』に変容させるカタカナ語」)
底本:『言葉の人生』左右社 二〇二一年

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