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評論・エッセイ

名残りの東京

 一九九〇年の春先だったろうか、その頃にはまだ存在していた「太陽」という月刊雑誌から、一年間にわたる連載を僕は提案された。毎月一回、どこでもいいから日本国内の好みの場所へ出向いていき、そこについての文章を書く、という内容の連載だ。手はずや段取りを整える役としてその編集者が同行し、写真を撮る役の人として写真家も同行するという。どこであろうと、僕はただいけばいいだけなのだ。文章は後日にどうとでもなるでしょう、とその編集者は言った。この連載は一九九〇年の四月号から始まったはずだ。だから一九九一年の春までの一年間、月に一度、一泊ないしは二泊の…

底本:『名残りの東京』東京キララ社 二〇〇九年

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