VOYAGER

片岡義男.com 全著作電子化計画

MENU

評論・エッセイ

ここは東京

 写真機を持って街を歩けば、写真に撮りたくなる景色はいくらでも見つけることが出来る。今日はそのような景色を写真に撮るのだ、ときめた日には写真機を持って歩く。写真機を持っていなくても、好きな景色はいたるところにある。後日かならず撮る、ときめておき、ある日ある時、さまざまな場所で、いろんな景色を僕は写真に撮る。
 街のなかにあるそれらの景色は、時間のなかに開放されている、と僕は感じる。あけっぴろげだ。いつ誰が見てもいい。すべての人に開放されている。写真は一瞬をフィルムのなかに止めるが、僕は閉じるために撮っているのではない。した…

底本:『ここは東京』左右社 二〇一〇年

このエントリーをはてなブックマークに追加