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小説

粉雪のつらく降るわけ

誰も知らないから自分で言う。「おまえ、どうするんだよ」

未来へと目を向けてある決断を下しても、それは現在が見ている風景でしかないからやがてその時がやってきた時点でかつて未来だった幻想から悪戯される、ということはあるだろう。
卒業と結婚を同時にやろう、という青年の性急さと、かつて手を切ったものに再びからめとられる弱さは、矛盾しない。
同時にそれらを抱えたまま彼は人の世の洗礼を受けることになる。
それを優柔不断と呼ぶのは簡単だがそのことよりも今、まさに直面していることの悲しみのほうに粉雪が寄り添っている。

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