エッセイ『作家の口福』より1作品を公開
『作家の口福』は、朝日新聞土曜版の別刷紙『be on Saturday』に掲載されていた人気連載です。片岡義男は2013年3月に計5回執筆をしました。片岡の他には、恩田陸・絲山秋子・古川日出男・村山由佳・井上荒野・江國香織・池井戸潤・中村文則・内田春菊他の各氏が執筆しており、一部は文庫化もされています。
「銭湯ビール冷奴」という題名の短編小説を書いているところだ。物語そのものは陽ざしのなかにあるとして、陽かげのどこかに身をひそめるもうひとつの主題として、なんらかの食べ物を配置していただきたい、という注文だった。いっそのことそれを題名にしようと、あれこれ考えていたらこの題名となった。ビールと冷奴はどこにでもある、などと言ってはいけない、それは普遍に到達している、と僕は言う。銭湯はもはや身辺からほとんど消えた。過去を感じさせるのは、そのせいだろう。
(朝日新聞 2013年3月16日掲載)
2025年8月1日 00:00 | 電子化計画
