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「できることならヘルプ・ミー!」を公開

『別冊 FM fan』第11号(1976年10月発行/共同通信社)掲載の「できることならヘルプ・ミー!」を公開しました。1966年のザ・ビートルズ来日から10年後、《ビートルズ '76)と題された特集の冒頭で発表されたものです。

 ぼくがビートルズを聞いた時は、ロックンロールやリズム・アンド・ブルースといった音楽によって、ぼく全体が、十分に揺すぶられたあとだった。揺すぶられることによって、ずっと底にあったものが上の方に浮かんできて、それまで上の方にあったものはあらかたすててしまい、とてもいい気分でいつづけて久しい、という時期にビートルズは聞こえてきたのだと思う。頼りない音だなあと感じたのと同時に、イギリスの英語がとてもじゃまになった。全体的に何とはなしにもの悲しく、このもの悲しさが、いつまでも気になっていた。
 ビートルズは、なぜ、圧倒的に、少年や少女をとらえたのか。ビートルズがもたらしたという意識や価値観の変革とは、つまり、大人たちの強い生きかたと、それを前にして「ちょっと待ってくれ」とうろたえている少年少女の弱さとの対比が、少年少女それぞれの身のうえに、はっきりと提示された事実をさすとぼくは思う。

(『別冊 FM fan』第11号[1976年10月1日発行]掲載)

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2025年6月20日 00:00 | 電子化計画