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片岡義男.com 全著作電子化計画

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お知らせ

小説『と、彼女は言った』より2作品、『窓の外を見てください』より2作品を公開!

毎週月曜日に、これまで片岡義男.comでは未公開だった小説作品を公開していきます。

『人生は野菜スープ』

『おでんの卵を半分こ』という短編小説で、自らの裸身を撮影することに熱中している立花香代子は、ウェンガーのポケットナイフを持ち歩いてます。銃刀法違反にはならない小さなナイフですが、場合によっては軽犯罪法に抵触する場合もあるため、持ち歩くことが問題視される場合もあるかもしれません。しかし、この小説のように、例えばおでんの卵を半分にしたいといった場合など、日常生活に於いて、小さなナイフやハサミは持ち歩くととても助かることが多いツールでもあります。歯が悪く、食事用のハサミを持ち歩いている人も知っています。この方の場合は役に立つどころか、これが無いと外食ができないのですから必需品です。そして、香代子同様、他人とシェアしたい時や、食べにくいモノを食べる時、よく切れるハサミやナイフは、本当に重宝するのです。それはこの物語の主人公である友納も真似するよなあと思うのです。

こちらからお読みいただけます。

『ユー・アンド・ミー・ソング』

『おでんの卵を半分こ』で始まり、この『ユー・アンド・ミー・ソング』で終わる短編集「と、彼女は言った」は、どの作品にも作家が登場し、小説を書くということを巡る物語になっています。そして、遂に、この作品において、片岡義男はモデルと小説の人物の関わりの実例のような物語へと到達します。面白いのは、作家の水谷が描く仲井という人物像と作中の仲井、さらにはゴールデン街のバーのママが見る仲井が、きちんと書き分けられていて、それは全て片岡義男が書いているということです。その上で作中の水谷に「その互換性において、ふたりは全く対等なんだ」と言わせています。つまり作家は神ではないということです。「と、彼女は言った」はまるで小説読本のような短編集なので、収録作は全編を通読されることをお勧めします。

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(底本:『と、彼女は言った』2016年、講談社)

『ラプソディック担担麵』

「窓の外を見てください」は長編小説ですが、片岡義男.comでは、それを元の小説の仕掛けに合わせ、6つの短編小説がひとつながりになって長編小説になるという構造通り、6つに分けて公開しています。長編小説なので、順番通り読むのが良いのですが、そこは片岡義男ですから、最後の『発想して組み立てる』以外は、どこから読んでも楽しめるというか、それぞれがきちんと独立した短編小説になっています。それは、短編小説がどこから始まりどこで終わるべきなのかを知り尽くしているからこその技術でしょう。実際、この冒頭部分である『ラプソディック担担麵』だけでも、登場する人物は皆魅力的で、物語の構造的にもきちんと小説として完結していて、しかも続きが気になるのですから。

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『裸の彼女を西陽がかすめる』

「窓の外を見てください」という長編小説の主人公である日高祐介の最初の目的だった、三人の女性に会いに行く旅は、この『裸の彼女を西陽がかすめる』であっさりと終了して、物語は新しい展開を迎えます。小説を書くことを考え続ける小説である以上、そう簡単には小説はできあがらず、しかし、そのためのタネだけは確実に蓄積されていきます。その過程で、女性をひとり、自分の実家に住まわせることになるというのが、なんとも片岡義男の小説らしく、ならばそれは日高にとっては、どのような意味を持つことになるのか、「小説を書く」ことが物語を動かす装置になっている小説だからこその面白さが既に表れてきます。この複雑な仕掛けの小説を片岡義男はなんと軽やかに書くのでしょう。

こちらからお読みいただけます。

(底本:『窓の外を見てください』2019年、講談社)

2021年2月8日 00:00 | 電子化計画

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