毎週火曜日に、これまで片岡義男.comでは未公開だった小説作品を公開していきます。

（底本：『ミッキーは谷中で六時三十分』2015年、講談社）

タリーズは、ドリンクにアイスクリームをトッピングできるのが、とても好きです。そして、駅にあるカフェチェーンには一種独特な居心地の良さがあります。だから、この「タリーズで座っていよう」の主人公のように、一日に何度も足を運ぶことがあります。駅のホームや改札を眺めながら、コーヒーを口に運ぶという習慣めいた行為も、しかし、いつ出来なくなるかわかりません。今のカフェチェーンも、ほんの25年前にはドトールくらいしか無かったのですから。そういう意味でも、この小説は2010年代の東京のスケッチであり、変わりゆく街についての物語なのです。タリーズのカップの内側に書かれたTaste the Difference!という文字も、そう考えると暗示的でもあります。

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