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評論・エッセイ

父親に間違えられた僕

 いまから三十年以上前、僕は僕の父親に間違えられたことがある。僕を僕の父親だと思った人がいたのだ。
 ラハイナ・ショッピング・センターの奥のほうに、いまはもうないかと思うが、かつては小さな食堂があった。建物の一角にあるその店は、中年の女性ひとりによって切り盛りされていた。調理場。出来た料理を客に渡す配膳のカウンター。そしてレジスター。店のなかはそれだけで、食べるためのスペースは外にあった。
 注文して代金を支払った客は、料理が出来たことを告げられるまで、店の外で待った。呼ばれてなかに入り、カウンターでトレイ…

底本:『白いプラスティックのフォーク──食は自分を作ったか』NHK出版 2005年
初出:「先見日記」2005年4月19日

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