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片岡義男.com 全著作電子化計画

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評論・エッセイ

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 一九五六年の年末に近い時期に、板橋区にいまでもある大山銀座という商店街で撮影された一点の白黒の写真が、『東京人』という雑誌の二〇一八年四月号に掲載されている。いま僕はそれを見ている。いまから六十一年前の板橋区の商店街の、とある店舗の前に、幟が斜めに立ててある。その幟の縦長のスペースいっぱいに、「歳末大売出し」という日本語が、毛筆体とも言うべき書体で、大きく印刷してある。「売」は旧漢字だ。そして最後の平仮名の「し」は、「出」の左側で「出」を抱き込むかのように、弧を描いている。
 僕が子供だった頃には、これとおなじようなも…

底本:『フリースタイル』2018年4月

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