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評論・エッセイ

現実に引きずられる国

 日本政府がやろうとしている憲法の改正は、あっさりと実現するだろう。そして新しい憲法は、その字面だけをぼんやりと読んでいるかぎりでは、たいそう立派なものとなる可能性は高い。
 改正の理由として、一般的に言ってもっとも説得力があるのは、現行憲法はいまそしてこれからの日本を取り巻く現実に合致しなくなったから、というものだ。この憲法では現実に対応出来ないから改正する、というわけだ。現実に合わなくなったものの典型としてあげやすいものの代表が、第九条だろう。
 日本は憲法を改正して現実のあとを追う国になる。新たな現実…

底本:『自分と自分以外──戦後60年と今』NHKブックス 2004年

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