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書評

一九六七年の風景に淡い思い出が甦る

〈書評〉加藤嶺夫著『加藤嶺夫写真全集 昭和の東京1 新宿区』

 この本に収録されている二百二十七点の写真のうち、時間的にもっとも遠いのは一九六六年に撮影されたもので、現在にいちばん近いのは一九九七年の撮影だ。失われた東京の街角の景色と気楽に言うけれど、一か所あるいはせいぜい二か所を例外として、他のすべての景色が消えてしまって存在しない事実に、僕は自分というひとりの存在の核心において、戦慄を覚える。そしてその意味において、東京はこの上なく怖いところだ、と僕は言う。
 戦後の日本は経済を最優先さ…

底本:『週刊朝日』2013年6月28日号

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