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書評

均衡を失う日本を考えるための定点

〈書評〉パール・バック著、丸田浩監修、小林政子訳『私の見た日本人』

 パール・バックの両親は一八八〇年、明治十三年に、アメリカから中国へ渡った。父親は理想に燃える宣教師、そして母親はその新婚の花嫁だった。中国に到着するまでに、横浜、神戸、長崎と寄港し、そこで知った日本が、ふたりにとっての最初のアジアとなった。
 両親は何度となくアメリカと中国を行き来したようだ。一八九二年、明治二十五年、アメリカで生まれたパール・バックは、幼くして中国へ渡ってそこで育ち、大学教育はアメリカで受け、人生の前半と…

底本:『週刊朝日』2013年5月31日号

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