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三つのパラグラフのなかの彼女

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 ひさしぶりに彼女に会った。夏のまっさかりの日に会って以来だから、ひさしぶりなのだ。いまは、すでに秋が深い。落葉樹の葉は光合成を終わりつつあり、日没の太陽の光を、高くたなびいている絹雲が静かに照りかえしている。

 真夏にはほんとうに潑剌とした夏の女であった彼女は、秋深くに会うともののみごとに秋の女になっていた。服や髪のつくりは言うにおよばず、声のトーンから表情、身のこなしにいたるまで、秋そのものであり、美しかった。淡い微笑が秋風によく似合っていた。

 会った明くる日に、もう一度、ぼくは彼女に会った。彼女が卒業した湘南の高等学校でバスケット・ボールの試合に出るというから、観に行ったのだ。昔からの友人や新しい友人たちといっしょに、彼女はバスケット・ボールのチームをつくっていて、時間をやりくりして練習をかさねては、試合をしている。コート内で躍動する彼女は、健康な美しさの具現のようだった。試合のあといっしょに夕食を食べた。そのときの食べっぷりもまた、健康な美しさそのものだった。

底本:片岡義男エッセイ・コレクション『「彼女」はグッド・デザイン』太田出版 一九九六年

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2017年9月30日 00:00
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