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評論・エッセイ

自分探しと日本の不況

 いまの日本は消費不況のなかにあるという。物が売れないのだ。なにがどのくらい売れれば気がすむのか、という問題はいまはかたわらに置いておくとして、売れないのは人々が買わないからだ、これは誰にでもわかる。なぜ買わないのか。買えないからだ。おかねがないから買えない、という側面は間違いなくある。失業した、収入が減った、将来が不安だ、買い控える、もともとあまり稼げない、といったしばしばあげられる理由には、物はひとまわりいきわたり、人々は日常のなかにさほど不足を感じていない、というような要素も加えられている。
 物が売れない最大の理…

底本:『自分と自分以外──戦後60年と今』NHKブックス 2004年

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