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書評

モノクロームはニューヨークの実力

 アンドリアス・フェイニンガーが自ら編集した写真集『一九四〇年代のニューヨーク』は、ぼくにとっては一機の非常にすぐれた出来ばえのタイム・マシーンだ。一九四〇年代という時間はとっくに過ぎ去ってもうないし、現在のニューヨークには主として建物の片隅や一部分に一九四〇年代がすこし残っているだけであり、どこをさがしても一九四〇年代のニューヨークはすでにない。
 しかし、写真は、二次元ながら昔をそのままいつでも目の前に見せてくれる。フェイニンガーのような写真家のモノクロームの写真は、それを見る人の気持ちのなかではもののみごとに三次元…

底本:片岡義男エッセイ・コレクション『なぜ写真集が好きか』太田出版 1995年

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